【小説レビュー】『VTuberのエンディング、買い取ります。』VTuberを知らないと面白さ半減?

『VTuberのエンディング、買い取ります。』は、第35回ファンタジア大賞において見事大賞を受賞しました。

しかもこの作品、これまでの大賞とはひと味違います。

なんと歴代の大賞の中で唯一、「ファンタジー」と「バトル」の要素がない作品なのです!

近年の大賞で有名な作品は『スパイ教室』や『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?』などですが、これらの作品にはファンタジー要素やバトルシーンがしっかり含まれていますね。

管理人

・『VTuberのエンディング、買い取ります。』の面白さを解説!
・気になった点と今後への期待も

そんなファンタジア文庫の歴史を変える作品のポテンシャルは如何ほどか。見ていきましょう。

作品の特設ページはこちら

目次

この作品のあらすじ

背表紙のあらすじをお借りします。

 VTuber――夢叶乃亜。彼女を推すことに青春の全てを捧げ、V界隈でも名を馳せていた高校生の苅部業は、乃亜の魂の醜態がネット上に晒され、大炎上したことで人生が一変する。
 運営から推しの臨終を告げられ絶望した業は、高校を休学し一年後VTuberの炎上ネタを扱うブロガーとして日々を過ごしていた。そんな業の元に『自分のVTuberを炎上させてほしい』という依頼を持ち込む美少女、小鴉海那が現れ――。
「これは人助け……いえ、VTuber助けみたいなものです」
『推し』の最後をプロデュースする救済と再生の物語。

VTuberのエンディング、買い取ります。|朝依しると

作品の良かった点

やはり大賞を取っただけあって、底知れない魅力があります。

なんといっても画期的なコンセプトですね。この時代だから生まれたものであり、それをいち早く取り入れて作品にしてしまった作者様の勝ちです。

独自の切り口から物語が展開されている

これで大賞を取ったと言っても過言ではないでしょう。

恐らくVTuberを題材に話を書こうとした人は多くても、この作品のような視点から書こうとした人はほとんど、あるいは一人しかいなかったでしょう。

このアイデアを出すには並々ならぬVTuberへの理解と、何より愛が必要です。物語の枠を超えて、作者様自身のVTuberへの熱が伝わってくるほどです。

物語はコンセプトの段階ですでに読者の興味を引くものとなっています。

「もしVTuberに自分を炎上させてくれと頼まれたら?」

これだけで面白そうですよね。

時代のトレンドを取り入れて、全く新しい展開を作っています。

筆者はこの作品にアップデートされたエンターテインメントを感じました。

いくらでも話が出来上がるフォーマットである

この作品がライトノベルであることを考えると、これから先も物語が続いていくことが予想されます。

続編を考える上で、この物語のフォーマットは都合が良いです。

なぜなら、VTuberがいる限り永遠に話が出来てしまうからです。

とても単純に書けば、VTuberの炎上ブログを運営する主人公のところに依頼が来ることでお話が進むわけですから、VTuberの数だけ話が作れます。

さらに良いことは、物語の中でどれだけVTuberを作っても不自然にならないということです。

実際のVTuberの数は2022年11月29日の時点でなんと20000人を突破しています(株式会社ユーザーローカルのプレスリリースより)。

現実に裏打ちされているため、思い切ってキャラクターを登場させることができるのです。

メインヒロインがいない!?

これもまた画期的な点ですが、この作品にはメインヒロインがいません。

言い換えれば象徴的な存在となっています。

主人公の業は自分の推しを炎上後もずっと応援しており、彼の行動の奥底には常に推しへの愛がありました。いくら美少女に囲まれても、なびくことはありません。

もう存在しない推しを愛し続ける業の芯の強さは、フィクションの人物ながら恐ろしいとさえ感じますね。

このように、メインヒロインの立ち位置という点でも、独自の方向性を打ち出していることが分かります。

気になった点

丁寧に分かりやすく描かれていましたが、やはり題材ゆえの内輪ウケ感はありました。

VTuberをあまり知らない筆者は、時々主人公の苦悩に共感できませんでした。そこまで深刻になることでもないと、冷めた目で読んでしまうこともありました。

そのためVTuberを知らない人が読むと面白さが十分に伝わらない可能性があります。ただし、これはどの分野でも言えることでして、この作品に限ったことではありません。むしろ、VTuberのことが良く分かるよう丁寧に描写されていることは好印象です。

それから、キャラクターが偏った側面からしか描かれていないように思えました。

「こういうキャラがいますが、実はこのような秘めた思いが云々――」

といった人物の裏表までで止まっていて、そこからもう一歩踏み込んでほしかったです。

ただ、話が良くできている以上、求めすぎな気もしますけどね。

それに、続編も出ることでしょうから、キャラクターの変化はまだまだ期待できます。

その意味では、これからさらに面白くなる可能性を秘めていると言って良いでしょう。

まとめ

エンタメの新時代を作った『VTuberのエンディング、買い取ります。』。

この作品の登場を機に、さらに革新的な物語が生まれてくることも予感させる、良作です。

管理人

気になった点も続編で解消されることが期待されますね

これからの躍進にも期待しましょう!

以上!

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