【一人語り】ヤバい禁止令

 驚くようなことがあるとつい「ヤバい」と言ってしまうのを直したい。

 今回、レビューでも小説でもありません。私が日常の中で考えたことを、根拠も知識もなしにつらつらと書くだけの記事です。ただの水増し。

目次

ヤバい禁止!

 物書きの端くれである私は、普段から言葉に対しては人一倍気を使っている(つもりだ)。人の言う言葉はもちろん、自分の言葉にも注意を払い、研鑽を重ねている。

 最近気になったのが「ヤバい」という言葉だ。

 ヤバいは便利すぎてヤバい。とりあえずヤバいと言っておけば大抵のことは説明してくれる。これを禁止されると途端に言葉が出てこなくなってしまう。

 だがそれは甘えである。

 このところ初対面の人と話すことが増えてきた。そのほとんどが目上の人で、話し方には細心の注意をしなければならない。普段話すような言葉に危機感を覚えた。

 できる大人になるためには、ヤバいを使ってはいられない。どんなにお洒落にキメても、ヤバいと言うだけで未熟な印象になってしまう。カッコいい大人として、言葉づかいもカッコよくあるべきだ。

 もうガキではない。落ち着いて品のある話し方をしなければ恥ずかしい。

 そのために、ヤバいを禁止しよう。

 私はそう思い、取っかかりとして若者がよく使う言葉について考えてみた。

ヤバかったです(小並感)

 例えば、ジェットコースターに乗った感想をヤバかったのひと言で済ますのは簡単だ。いわゆる小並感というものであるが、このような感想を持った人はきっと少なくないはずだ。ここでヤバいを禁止したらどうなるだろう。途端に考えることが増える。

 ジェットコースターのヤバい部分は何だろうか。スピード? 揺れ? 高さ? それらがどうなって、自分はそれを受けてどう感じたのか。事細かに説明するのが本来の感想だろう。だが面倒くさい。面倒くさいからヤバいで済ます。人間の読解力は優れているので、ヤバいと言うだけでもある程度想像できてしまう。日本人の読解力が落ちていると聞くが、このような形に置き換わっているだけなのでは? とまで思えてくる。

他にもある若者言葉

 最近は「エグい」もよく使われるようになった。意味はヤバいとあまり変わらないように思える。私はヤバいに対してエグいは使い慣れていない。みそ汁にニンジンを入れて失敗したときにえぐいという感想が出るくらいだ(違うそうじゃない)。
 友人やバイト先の仲間はよく「エグい」を使う。聞き慣れない言葉に抵抗を覚えることもあるが、そこはこらえて「エグいね笑」と相槌をうっている。

 ワンチャンもよく聞く。これは私も使う。サッカーの試合をみていて、応援しているチームが攻めているときはつい「ワンチャンあるぞ!」と言ってしまう。使い勝手はいいが、ヤバいに比べたら意味は限られるだろう。ワンチャンは、大学生がよく使う印象がある。友人いわく、

「大学生のワンチャンはノーチャン」

 だそうだ。まったくその通りだと思う。

「シンプルに~」もつい言ってしまう。何かを言う際にワンクッション置くために使うことが多く、実際にそれがシンプルなのかどうかは問題ではないのだ。

「シンプルにヤバい」

 これを言っておけば森羅万象の説明がつきそうだ。

ねこふんじゃった

 スラングではないが、使うと幼稚に聞こえる言葉として「~しちゃった」がある。大人の会話をするためには絶対に避けたい。

 正直なところ「ヤバい」はよっぽどTPOをわきまえられない人でなければフォーマルな場面で口にすることはない。だが「~しちゃった」はかなり訓練しないとうっかり口にしちゃう。取引先で言おうものなら赤っ恥だろう。

「~してしまう」など、適切な言葉づかいができるように練習しよう。友達と話すときにまで気をつける必要はないが、場面に応じて使い分けられるようにしておくべきだ。

 ビジネスシーンでは「ねこふんじゃった」ではなく、「ねこふんでしまった」を使おう。

大丈夫ですか?

 ちょっと前にあった話がある。

 バイト先で客から10000円札を渡された。

「10000円で大丈夫ですか?」ときくと、相手のおっさんはそれを受けて、

「何が大丈夫なの?」

と言葉尻をとらえるようなことを言った。はあ、めんどくさい人に当たってしまったものだ。私はとっさに、

「小銭はないですか?」

 と言い換え、おっさんは

「そうでしょ?」

 と言い、

「最近の若者は何でも大丈夫って言うんだから」

 とつぶやいた。

 確かに「大丈夫」という言葉の本来の意味を考えると私の言い方は適切ではなかったのだが、そのときはムカッときた。何が最近の若者だ。分かったような口をききやがって。
 しかしおっさんの言っていることも正しく、私はそれ以来、「大丈夫」という単語に慎重になった。

 大丈夫は便利さにおいてヤバいと双璧をなすのではないか。本来の意味に加えて、「はい」と「いいえ」のどちらにも対応できるのは、よく考えてみると異常だ。
「~しましょうか?」に対して言えば「いいえ」になるし、「~してもよろしいですか?」に対して言えば「はい」になる。あるかないかの確認も「大丈夫」のひと言で済んでしまう。元々はしっかりしている様子を意味している言葉であるが、いやはや、日本語は便利である。

ヤバい!え、大丈夫?


 ヤバいと大丈夫だけで会話が成立するのではないか。流行りの生成AIに聞いてみたところ、面白い答えが返ってきた。以下はそのコピペである。

「ヤバい」と「大丈夫」の二つの単語だけで会話の例を作ってください

はい、「ヤバい」と「大丈夫」の二つの単語だけを使った会話の例を作成します。

A: ヤバい!
B: 大丈夫?
A: ヤバい、ヤバい!
B: 大丈夫、大丈夫。
A: 大丈夫?
B: 大丈夫。
A: ヤバい…大丈夫。
B: ヤバい?
A: 大丈夫!
B: 大丈夫。ヤバい!
A: ヤバい?大丈夫?
B: 大丈夫。ヤバくない。

Claudeより

 笑ってしまった。マックかスタバで女子高生が喋っている光景が浮かんでくる。
 ちなみに解説もしてくれた。

はい、この会話例の解説をいたします。

A: ヤバい!
B: 大丈夫?
(何か問題が起きたようで、Bが心配している)
A: ヤバい、ヤバい!
B: 大丈夫、大丈夫。
(Aがパニックになっているが、Bが落ち着かせようとしている)
A: 大丈夫?
B: 大丈夫。
(Aが確認し、Bが問題ないと答えている)
A: ヤバい…大丈夫。
B: ヤバい?
(Aが自分で状況を受け入れ、Bが驚いている)
A: 大丈夫!
B: 大丈夫。ヤバい!
(Aが安心し、Bが同意しつつも驚きを表現)
A: ヤバい?大丈夫?
B: 大丈夫。ヤバくない。
(Aが不安になり、Bが問題ないと安心させている)

この会話は、「ヤバい」(危険、驚き、興奮を表す)と「大丈夫」(安全、問題なし、心配ないを表す)という対照的な意味を持つ言葉を使って、様々な感情や状況を表現しています。文脈や話者のトーンによって、これらの言葉の意味合いが変わることを示しています。

Claudeより

 こう解説されると案外成り立っているものだ。少し手を加えればちょっとしたお話のネタになりそうだ。

 AIの解説で気づいたが、「ヤバい」と「大丈夫」は上手いこと対照的な意味になっている。これは興味深い。ここではこれ以上深堀りするつもりはないが、後でじっくり調べてみたらさらに面白い発見がありそうだ。

まとめ

 ここで挙げた言葉を使わなければ、大人の会話ができるかと言われれば違うだろう。言葉は時代とともに変わっていくものだ。100年前の言葉づかいからしたら、今のフォーマルな言葉づかいさえくだけて聞こえるだろう。結局は、その時代に合わせた言葉づかいを使う必要がある。

 油断していると、置いていかれる。我々は、言葉にもっと敏感であればならない。

 ヤバいね。

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